癌、ガン、がん

先日、娘の高校テニス部の試合を見に行った時、しばらく会っていなかった娘の後輩のお母さんがスッと横に座ってきて、「アヤ、秘密を教えてよ。どうやってダイエットしたの?」と聞いてきた。



「秘密はね。。。胃がんの手術とその後に起きた数々の合併症で、4ヶ月の間に3回手術したからだよ」なんてまさか言えず、

「キャベツばっかり食べてたの!」と冗談で返した。

今年に入ってからガンガン言ってるので、私にとってはだんだん板についてきた新しいアイデンティティーだが、「がん=恐ろしい病」という印象は強く、その場の雰囲気を読むと気軽に口に出しにくいワード。


こんな世にも恐ろしい病気の発見と共に、私の2024年はスタートし、45歳でがんとその後の色々をサバイブする羽目になった。(これについてはまた詳しく書きます)


ところで、がんってどう書けばいいのか迷う。漢字だと「癌」。やまいだれの中に口が3つに山??

漢字の由来は知らないけど、パッとみると山は私で、口3つはがん(ちょうど3回手術したし)。がん細胞に押しつぶされかけている自分を想像する。実際に、精神的にも肉体的にも押しつぶされそうになった。


ガンってカタカナで書くとアメリカに住んでいる私は銃を思い浮かべる。なのでやっぱり漢字よりソフトなひらがながいいかな、ということで「がん」にします。


がん経験者や、がん治療を継続している人たちを「がんサバイバー」と呼ぶ。特にアメリカではcancer survivorという言葉をよく耳にする。

それにしても、がん以外の病気で”XXサバイバー”と呼ばれる病気って聞いたことがない。

4月末に最後の手術を終えて、以前の生活に戻った私には、さまざまな時と場合に“cancer survivor” という新しい呼び名がつくようになった。

そうだ、私、がんサバイバーになったんや。

健康が取り柄だった私には、この新しいcancer survivorというアイデンティティーに、最初はかーなーり違和感を感じていたけど、今ではスラっと口から出る言葉。

先日、スーパーのレジに並んでいた際、キャッシャーのお姉さんの腕に、乳がんサバイバーのタトゥーが入っているのを見た。タトゥー率の高いオースティンなので、以前だったら目にも止まらなかっただろうけど。

お姉さんと目が合った時「私もキャンサーサバイバーだよ♡」って視線を送った。

死にそうな経験をしたけど、まだ生きてるぜぃっていう、プライドというか。。。多くのがん患者やサバイバーが経験する暗いundergroundの世界に行って帰ってきた人同士の暗黙の了解、みたいな。

確かにタトゥーしたくなる気持ちもよくわかる。私は胃がんだから、胃のタトゥーでもしようかなw

もっとアートの才能があれば、半分になった胃をかっこよくデザインできるかも。

こういう苦境をプライドに変えていくカルチャーはアメリカっぽいのかな。

一度がんになったら「再発」と隣り合わせ。これもがんの厄介なところ。Drに行くたびにがんがどこかにあるってビクビクしている自分に気づく。

いつになったらがんと離れられるのか、とてもグレー。恐怖と不安が重〜くぶら下がっている。でも、痛くて辛い経験をしてまだ自分はこここにいる。

最後の手術から半年経った今、この現実が小さな自信のかけらみたいに、自分の中に存在し出しているのを感じる。だからこそ、生きる喜びと、その重みに感謝しながら cancer survivorという新しいアイデンティティーと上手く生きていけるようにしたい。

がんになってから「彩ちゃんの経験をSNSとかでシェアしてくれたら、たくさんの人が健診に行ったり、アメリカ在住日本人が日本での健診を考えたりするきっかけになると思う」と周りに言われることがある。最初は『このクソ経験が誰かの役に立ってくれるなら‼︎」とやる気になったけど、

「人のために」が目的になると、どこかカッコつけちゃったり、人の健康・命の話だから読んでいる人を嫌な気持ちにさせたらどうしよう、、、とか考え出し書けなくなってしまった。

そこで、私自身が心と頭を整理するために、前を見て歩いていけるように、自分のために書いてみようと考えているところです☺︎

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