夢見る少年少女のリプレゼンテーション(Part 1)
昨年のサッカーWorld Cup期間中、負け試合の後でもゴミ拾いをする日本人ファンの様子が話題になり、私もアメリカ人の知り合いに「日本人って素晴らしいねー✨」なんて言われたりして、「まあ、日本人なら当然よ〜」などと自分は何もしてないのに、ちょっといい気分になったりしていました。今回は(ゴミ拾いに関してのディベートはここでは置いておいて)国籍、人種、ジェンダーなどに否応なしにつきまとうイメージや固定概念が、どのように子供達に影響しているのかを考えます。
REPRESENTATION(リプレゼンテーション)とは?
アメリカではrepresentationという言葉をよく耳にします。representationの意味は幾つかありますが、ここでは社会の中での代表、代弁、表象(イメージ)といった意味です。上記のサッカースタジアムでのゴミ拾い隊も、サッカー日本代表も日本のrepresentationの一部です。
女性のリーダーシップが子供達に与える影響
話はサッカーから2016年のアメリカの大統領選に飛びます。ヒラリーが(トランプに)落選した大統領選です。政治が赤コーナーvs青コーナーにぱっかりと分かれ、極端性を好むこの国では、住んでいるエリア、すなわち学校区までに政治の色が出ます。当時娘はまだ小学校低学年で、青のエリア(民主党が多数)の学校区だったため、周りにはヒラリーが当選することを疑わない親たちばかりでした。
当選結果が明らかになった翌朝の、私ちの落胆はひどいものでした。初の女性大統領どころか、女性を卑下するトランプが大統領に選ばれたことで、多くの女性がこの日黒の洋服を着て仕事に行きました。何故この選挙で「アメリカ史初の女性大統領」を多くの人が心待ちにしていたのか。それは、アメリカではrepresentationが重要視されるからです。では、ヒラリーが大統領になっていたら、どんなことがリプレゼントされていたかを考えてみると、パッと上がるのは以下の3点です:
① 女性のリーダーシップ(アメリカ最高峰の地位)
② 米国民主党のイメージ
③ アメリカのイメージ
この中で特に①の女性のリーダーシップは、子供たち・若い人達に直接影響があると言えます。イメージの湧かないものを「将来こんな大人になりたい」と目標にしづらいことは想像がつくと思います。恵まれない子供達を守る活動で著名なMarian Wright Edelmanの言葉に、"It’s hard to be what you can’t see"(見えないものになるのは難しい)とあります。
アメリカ大統領(日本の内閣総理大臣も同じ)=男性の仕事、又はリーダーシップは男性の役目というイメージがつき、女の子にとって、自分が社会でリーダーシップを取る姿、政治家やプロフェッショナルな仕事に就く姿を想像するのが難しくなります。「私は女だからどうせ無理」という気持ちが芽生え、チャレンジしようとしても、その無理だと思う気持ちが障害になります。
男の子も解放してくれるフェミニズム
身近な例を挙げます。不思議なことに、幼い頃から娘が仲良くなるお友達のママたちのほとんどが大黒柱です。出張でいなくなるのもミーティングで学校の行事に出られなくなるのもパパではなく、大体がママの方です。普段はパパがお迎えや家事をこなし、週末はママがご飯を作ってくれるという感じです。こういった環境で育った女の子たちにとって、自分が将来家族の経済を支えることや、企業でリーダーシップをとる将来のイメージは、自分のママを見ているので自然に出てきます。そして母親の歩んできた道(学歴や努力、失敗など)をそのまま手本とすることが出来ます。
このような母親を持った男の子は、将来上司が女性でも違和感を感じない上に、何よりも「男であることについてくるステレオタイプや社会からの期待」から解放されます。男だから、、、という余計な物差しを持たず、自分らしさを追求する自由を得ます。
このように、アメリカトップの座である大統領に、女性が就任する事で生まれる、アップデートされたrepresentationがもたらす影響は大きいことがイメージできると思います。
まとめ
今回は、リーダーシップがもたらす子供たちへの影響について書きました。Part 2ではアメリカで暮らすアジア人、日本人のreprensentationについて考えます。